近年、動画生成AIが次々と登場しており、その勢いはまさに「雨後の筍」のようです。
とはいえ、多くのツールは短いクリップの生成に特化しており、数分以上の長尺動画の制作には向いていないのが現状です。
そこで本記事では、長尺動画の生成にも対応したおすすめの「動画生成AI」を厳選して紹介します。
目次
動画生成AIの現状:なぜ「長尺」は難しいのか?
動画生成AIで数分以上の長尺コンテンツを作るのが難しい主な理由は、「一貫性の維持」と「計算資源の限界(コンテキスト長)」にあります。
AIは長時間の映像になるほど、登場人物の顔や服装、背景などを一貫して再現し続けることが苦手です。数秒程度なら自然に見えても、時間が延びるにつれてキャラクターが変形したり、風景が不自然に変化したりする“破綻”が起こりやすくなります。
これを防ぐには、AIが映像全体の文脈を長く保持する必要がありますが、動画データは膨大で、全フレームの情報を処理し続けるには莫大な計算コストがかかります。
現在のモデルではこの文脈保持に限界があるため、実際には短いクリップを生成して繋ぎ合わせる手法が一般的です。
長尺動画を一貫した品質で自動生成できるAI技術は、まだ発展途上にあるといえるでしょう。
1分以上の長尺動画に対応したおすすめAIツール2選
長尺動画のニーズが高まる中、対応できるAIツールはまだ少ないものの登場しています。
これらは短いクリップ生成を超え、長く一貫性のある映像を作成でき、YouTube動画やプロモーション映像などで注目されています。
1. Kling AI(最長3分)
生成可能な動画の長さ:3分間
Kling AIは、中国の大手テック企業「快手(Kuaishou)」が開発した高性能な動画生成AIツールです。
滑らかな動きとリアルな映像表現に定評があり、リリース当初は中国国内向けでしたが、現在ではグローバル展開が進み、世界中のクリエイターから注目を集めています。
標準では、テキストプロンプトや画像を入力するだけで、最大10秒・1080pの高解像度動画を生成可能です。
さらに、有料プラン限定の「動画拡張機能(Video Extend)」を利用すれば、生成した動画を4〜5秒ずつ延長でき、繰り返し拡張することで最長3分間の長尺動画を作成できます。
なお、拡張時は元の動画と同じモデル・モードが適用され、2025年10月時点では1.6モデルのみこの機能に対応しています。
今後は2.1以降のモデルにも拡張機能が導入され、さらに高品質な長尺動画が生成できるようになると期待されています。
2. Sora(ChatGPT初代モデル・最長1分)
生成可能な動画の長さ:1分間
2024年2月15日、OpenAIは動画生成AI「Sora」を研究プレビューとして発表しました。
テキストプロンプトから最大60秒の動画を自動生成できるという、当時としては非常に画期的な技術であり、複数のキャラクターやシーン、カメラアングルに対応しつつ、登場人物や物体の一貫性を保つことが可能でした。
公式仕様では最大生成時間が60秒であり、解像度によって生成可能な時間が変化します。フルHD(1080p)では最大20秒まで、HD(720p)では最大60秒まで生成できるとされています。
ただし、初代Soraには映像の一貫性や物理的な動き、音と映像の同期などに課題があり、「動きがぎこちない」「音がずれる」といった指摘もありました。
それでも、テキストから最長1分間の動画を生成できる点は、当時としては大きな進歩でした。
10秒以上の長めの動画生成に対応したAIツール3選
10秒というと、現代の動画制作基準からするとかなり短めです。しかし、動画生成の分野では、10秒でも決して短いとは言えません。
ここでは、10秒以上の長尺動画を生成できるおすすめのAIツールを3つご紹介します。
1. Dreamina(最長10秒)
生成可能な動画の長さ:10秒
公式ページ:https://dreamina.capcut.com/ja-jp/tools/ai-video-generator
TikTokやCapCutを開発したByteDanceが提供する「Dreamina(ドリーミナ)」は、高性能な画像・動画生成AIプラットフォームです。
簡単なテキストプロンプトや画像を入力するだけで、シームレスなトランジションとリアルな動きを備えた動画をわずか数分で生成できる点が特徴です。
生成される動画は全体的に高品質で破綻が少なく、クリエイターは個人プロジェクトやSNS、マーケティングなど、さまざまな用途で手軽に魅力的な映像を作成できます。
ただし、動画速度を速く設定した場合、動きにやや不自然さが出ることがあるため、激しいモーションを伴う映像には不向きな側面もあります。
なお、無料会員でも毎日225クレジットが付与されるため、無課金でも複数の動画制作を試せる点も大きな魅力です。
2. Sora 2 Pro(最長15秒)
生成可能な動画の長さ:15秒
2025年9月30日、米OpenAIは次世代の動画生成AI「Sora 2」を発表しました。
OpenAIは「Soraは動画におけるGPT-1の瞬間、Sora 2はGPT-3.5の瞬間」と表現するほど、大きな進化を遂げています。
さらに10月3日には、上位モデル「Sora 2 Pro」が公開されました。Sora 2 Proは1080p・30fpsで、10秒または従来より5秒長い15秒の動画を生成可能です。
もちろん、他の解像度に設定することも可能で、解像度を下げればより高速に動画を作成できます。
Sora 2 Proは、動画生成AI専用SNS「Sora」のWeb版で、ChatGPTの有料ユーザー「Pro」向けに提供されています。商用利用も可能なため、映像制作会社にも適したサービスです。
利用にはChatGPT Proプラン(月額200ドル/約3万円)への加入が必要ですが、Sora 2 Pro自体の追加料金はかかりません。
3. Midjourney(最長21秒)
生成可能な動画の長さ:21秒
画像生成AIの分野で定評のあるMidjourneyが、2025年6月19日に初の動画生成AI「V1 Video Model」のリリースを発表しました。
このV1モデルは、静止画をベースに初期で5秒間の動画を手軽に生成できるのが大きな特徴です。
さらに、生成した動画は4秒ずつ最大4回まで延長でき、最長で21秒の比較的長めの動画クリップを作成することも可能です。
ただし、V1の現時点での出力解像度は480p程度と、現代の映像基準から見るとまだ低く、高画質や細かなディテールが求められる商用利用には単体での対応が難しく、他ツールとの併用が必要です。
なお、Midjourney側もこのV1を「技術実験の段階」と位置づけており、今後のアップデートで画質や表現力が大幅に向上することが期待されています。
感想
現在の動画生成AIは、技術的制約から長尺動画の制作が依然として難しい状況です。
特に、滑らかな動きや高画質を維持しつつ長時間の映像を生成するには、高度な計算処理能力と大量のデータが必要になるため、一般的なAIツールでは数秒から数十秒程度の動画が主流となっています。
その中でも、今回紹介したKling AIやSora、Dreamina、Sora 2 Pro、Midjourneyは、それぞれ最大時間や特長に違いはあるものの、短時間でクオリティの高い動画を生成できる点で共通しています。
今後の技術進化によって、より長尺で高品質な動画生成が手軽に行えるようになることが期待されます。