近年、急速に進化を遂げている「動画生成AI」ですが、その多くはクラウドサーバー上で処理を行う仕組みになっています。
しかし、プライバシーの確保やコスト削減の観点から、「自分のパソコン上で動画を生成したい」というニーズも高まっています。
そこで本記事では、ローカル環境で利用できるおすすめの動画生成AIツールを厳選して紹介します。
現状、ローカルで使える動画生成AIは、PythonやPyTorchの環境構築や高スペックPCが必要で、クラウドサービスに比べ性能が劣ることがあります。
もしローカル環境で十分な結果が得られない場合は、業界トップクラスの「Kling AI」の利用を検討してみてください。
Kling AIでは、最大3分の高品質動画を生成でき、1080pの高解像度と30fpsのなめらかなフレームレートで、鮮明かつリアルな動画を作成できます。
目次
ローカル環境で動画生成するメリットとデメリット
そんな「ローカルで動作する動画生成AI」ですが、当然メリット・デメリットがあります。
1. メリット:プライバシー保護とコスト削減
ローカル環境で完結するため、データを外部サーバーに送る必要がなく、プライバシー面で安心です。
また、クラウド型AIのような月額料金やクレジット制のコストがかからない点も魅力です。
さらに、インターネット接続に依存せず、安定した処理が行えるのも利点です。
2. デメリット:導入の手間と高い動作環境
一方で、導入時にAIモデルやライブラリの設定が必要な場合があり、初心者にはやや難しく感じることがあります。
また、動画生成には高性能なGPUや大容量メモリが求められるため、パソコンのスペックが十分でないと処理に時間がかかることもあります。
【無料】ローカルで使えるおすすめ動画生成AIモデル4選
次にローカルで使用できる動画生成AIモデルのおすすめを4つ紹介します。
価格設定や機能、それぞれの独自の特徴について解説していますのでぜひ気になったものを試してみてください。
一つずつ詳細を確認していきましょう。
1. HunyuanVideo
料金:完全無料(オーペンソース)
商用利用:基本的に可能(地域制限やユーザー数に基づく制限がある)
HunyuanVideo(混元ビデオ)は、WeChatなどで知られる中国の大手IT企業 Tencent(テンセント)が開発した動画生成AIモデルです。
OpenAIの「Sora」と同様に、最新の「DiT(Diffusion Transformer)」構造を採用しており、高精細で滑らかな映像を生成できるのが特徴です。
当初はテキストから動画を生成するT2Vモデルとして登場しましたが、2025年3月には画像から動画を生成する「HunyuanVideo-I2V」もリリースされました。
HunyuanVideoで生成される動画は生成される映像は非常に高品質でリアル。今後はショート動画や映像制作など、幅広い分野での活用が期待されています。
ただし、動作には最低でも45GBのGPUメモリが必要とされており、Google ColabのA100環境では実行が難しい点には注意が必要です。
2. FramePack
FramePack(フレームパック)は、2025年4月17日に公開された注目の動画生成AIプログラムです。
開発者は、画像生成AI「ControlNet」や「Fooocus」を手がけた、スタンフォード大学在籍中の Illyasviel(イリヤスフィール)氏です。
従来、ローカルで動画生成AIを動かすには最低12GBのVRAMが必要でしたが、FramePackは6GBでも安定動作する可能性があるのが魅力です。
さらに、生成スピードの速さも大きなメリットです。かつて数時間かかっていた動画生成を、1秒あたり約1分のペースで処理します。これにより、最大120秒までの長尺動画も手軽に生成可能になりました。
さらに、FramePackを中心として、マルチキーフレーム対応など色々な実験的な機能追加も行われており、急速に進化しています。とても期待しています。
Windowsユーザーであれば、PythonやPyTorchのセットアップ経験がなくても、公式の「ワンクリックパッケージ」を使うだけでFramePackを導入できます。
ワンクリックパッケージには、必要なPython環境やPyTorch、CUDAなどのライブラリがすべて同梱されています。
3. Wan2.2
2025年7月28日、中国のアリババが公開した動画生成AIモデル「Wan2.2」が話題です。
前作の「Wan2.1」をさらに上回る性能を持ち、高性能GPUを使えば、最大720p/24fpsの高画質動画も生成可能です。
Wan2.2のすごいところは、複雑なシーンも破綻なく生成できる点です。カップ麺や箸のような複数オブジェクトが絡む場面や、銃を撃つアクションのような複雑な動作も自然に描写できます。これは、Mixture-of-Experts(MoE)アーキテクチャのおかげで、精度と汎用性が大幅に向上しているからです。
さらに、Wan2.2はマルチモーダル生成にも対応。テキスト、画像、音声など、いろんな入力から動画を作れるので、映画や広告制作、学術研究、ゲームやアニメーション制作など幅広い場面で活躍できます。
4. Open-Sora-Plan
Open-Sora Planは、OpenAIの動画生成モデル「Sora」の性能をオープンソースで再現することを目指した動画生成AIです。
ユーザーが入力したテキスト(プロンプト)に基づき動画を生成でき、ローカル環境でも実装可能な点が大きな魅力です。
現段階では10秒程度の1024×1024動画を生成できますが、将来的には最大1分程度の動画生成も可能になるようトレーニングが進められています。
技術面では、拡散モデルやトランスフォーマーアーキテクチャを採用し、DALL·E 3の画像キャプション生成技術も活用。さらに、Version 1.5.0では高圧縮WFVAEや改良版Sparse DiTアーキテクチャを導入し、HunyuanVideoに匹敵する性能を実現したとされています。
一方で、物理シミュレーションや因果関係の理解など、改善の余地がある点も残されています。
【無料】ローカルで動画生成AIを実行できるおすすめツール2選
ここからは、ローカル環境で動画生成AIモデルを動かせる無料ツールを2つ紹介します。
1. EasyWan22
EasyWan22は、Alibaba(アリババ)が開発した最新の動画生成モデル「Wan 2.2」を、ローカル環境で手軽に動作させることができるツールです。
Zuntan氏が配布しているオールインワン環境で、ComfyUI本体に加え、必要なモデルやPython環境まですべて同梱されています。ダウンロードして解凍し、インストーラーを実行するだけでセットアップが完了し、すぐに動画生成を始められます。
複雑な操作は不要で、プロンプト(テキストによる指示)を入力するだけで、短い紹介動画やアニメーションを自動生成可能です。
また、量子化されたA14Bモデルの採用により、I2V(画像から動画への生成)も安定して動作し、描画速度も実用的なレベルにまで改善されています。
2. Comfyui
ComfyUI(コンフィUI)は、画像生成AI「Stable Diffusion(ステーブル・ディフュージョン)」を操作するためのノードベースGUIツールです。
このツールでは、各機能を「ノード」と呼ばれるブロックとして視覚的に配置し、線でつないで処理の流れを構築するという、ノードベースのUIが採用されています。
実際、動画生成においては、Alibaba(アリババ)が提供する無料モデル「Wan2.1」など、外部モデルを組み合わせて利用することも可能です。。
しかし、ComfyUIはとにかく初心者にやさしくありません(正直、慣れた人でも扱いづらい部分があります)。ワークフローが非常に複雑なため、最初のうちは操作に戸惑ったり、難しさを感じてしまう人も多いでしょう。
高度なカスタマイズを可能にする反面、ComfyUIは、一般の方に手軽に「おすすめできる」ツールではありません。
まとめ
今回は、ローカル環境で使える動画生成AIを紹介しました。
ローカル実行の魅力は、ネット環境に左右されず、高速かつ安全に動画を生成できることです。
一方で、GPU性能などある程度のPCスペックが必要になる点には注意が必要です。
無料で使えるモデルとしては、HunyuanVideo、FramePack、Wan 2.2、Open-Sora-Planがあり、環境構築を簡単にしたい方は、EasyWanVideoやComfyUIを活用するのがおすすめです。
最初は少し難しく感じるかもしれませんが、慣れてくるとローカル環境でのAI動画生成はとても自由度が高く、クリエイティブな表現の幅が一気に広がります。