デジタル処理によるアップスケーリングというのは、20年以上前からある枯れた技術がベースになっています。
最近、機械学習を中心としたAIテクノロジーの導入で、「AIアップスケーリング」がまた話題になっています。
そこで今回は、「動画のアップスケーリング」について詳しい方法を解説します。
目次
動画アップスケーリングとは
動画アップスケーリングとは、動画を元の大きさよりも高い画素数(解像度)に変換すること。分かりやすく言えば、低解像度の動画を高解像に拡大すると理解してもいいです。
使われる場面は人によって異なるが、大抵の場合、画質の向上、大画面での表示、ディテールの復元などが主な目的として挙げられます。具体的な手法と言えば、下記のようにAIを使用するかどうかによって分けています。
機械学習とは、機械(コンピュータ)が大量のデータを学習することで、そのデータに存在するルールやパターンを見つけ出して、分類や予測を実現する技術です。
動画アップスケーリングの分野では、低解像度な動画と高解像度な動画の特徴を大量に学習したAIが、元々存在しない画素を予測で補完することで、高解像度の動画を生成するとのことです。
・バイキュービック補間(Bicubic Interpolation)
両者どっちもピクセル間の値を直線的に補間して拡大する手法です。
前者は周囲2×2のピクセル情報を使って求めたい点の色を算出しているので、処理が軽い補間と言えます。
後者は前者の上位版みたいで、6×6の計算方法を採用するため、負荷が重くなるのは当然だが、その分より高クオリティな結果も得られます。
AIで動画をアップスケーリングする方法(4K/8K)
1. メリットとデメリット
【メリット】
- SD→フルHD→4K(さらに8K/16K)並みに動画を解像感良く変換することができる。
- 動画を拡大しながらディテールを復元(補間)できるので、元々高解像度で撮影された動画とほとんど見分けがつかないほど自然な美しさ。
【デメリット】
- 膨大な計算やデータ処理によって、高性能なパソコンとグラフィックカードが必要になる。
- AIモデルは学習データに依存しているため、結果は動画の内容によっても異なるし、観る人の好みにも左右される。
- 元動画の解像度が低すぎると、AIによるアップスケーリングも高品質な結果を得ることは難しい場合がある。
- PCのスペックと生成された動画の容量にもよるが、動画の変換終了までかなり時間がかかるのが一般的。
2. AIアップスケーリングに対応したツール
現状、「AIアップスケーリング」の機能を搭載したツールと言えば、「パソコンソフト」は主流になっており、「オンラインサイト」も利用できます。
どちらが良いかは、具体的なニーズや要件、使用状況によって異なります。筆者の場合は、パソコンソフトにしたほうが断然快適です。パソコンソフトを使うことは、ローカルで処理を行っているため、作業の効率アップやセキュリティの観点からも得策と言えます。
AIアップスケーリングソフトって、それぞれ独自のアルゴリズム技術があるようで優劣が出ます。その中で、「Topaz Video AI」はダントツのクオリティで、他に無いと言える程ですね。

Topaz Video AIは、動画アップスケーリングに特化したもので、あらゆる動画(実写映像、アニメ、CG)を最大4K/8K/16K解像度まで向上させることができる上、高度なAIモデルと設定項目があるので、ノイズを綺麗に除去し荒れている被写体のディテールを回復し輪郭のボケも綺麗に修整してくれます。
3. AIで動画をアップスケーリング(高画質化)する手順
ここで、Topaz Video AIを使って具体的なやり方と操作手順を説明していきます。
ソフトのインストールに不安がある方は、以下の記事をご確認ください。

1. Topaz Video AIを起動したら、アップスケーリングしたい動画をソフトにドラッグ&ドロップで取り込みます。

2. 次の画面で、あらかじめ用意されている「Presets(プリセット)」から目的の解像度を選ぶのが最も簡単です。

3. 右側の設定メニューでは、使用するAIモデルや動画の種類に加えて、ノイズ除去やディテール復元の強度など、細かな項目を自分で調整することもできます。

※ なお、AIが自動で最適な設定を選んでくれるため、設定をスキップしても問題ありません。
4.「Render 2s」をクリックすると、2秒間のプレビューを確認できます。
5. 問題がなければ、右下の「Quick export」をクリックして動画を保存すれば完了です。

Topaz Video AIを実際に使ってみた結果↓↓↓

※ Topaz Video AIの有料版を購入すれば、透かしやロゴを削除することが可能です。
AIを使用せずに動画をアップスケーリングする方法
1. メリットとデメリット
【メリット】
- 従来の手法(アルゴリズム)によって、計算量が少ない=CPU負荷や処理時間が少ない
- 動作が軽くて、低スペックのパソコンでも(ある程度)快適に変換作業を行える。
- Handbrake、XMedia Recode、FFmpegなど無料な動画変換ソフトだけでイケる。
【メリット】
- 画像が引き伸ばされて、ドットが潰れて全体がボヤけて見えるようになってしまう。
- 元より全然高画質にならないのに、ファイサイズは無駄に大きくなっている。
2. Handbrakeで動画をアップスケーリングする手順
ここで、Windows/Mac/Linuxに対応して、完全無料でオーペンソースの動画変換ソフト「Handbrake」を使用します。
1. Handbrakeを開いて、対象の動画をグレーのエリアにドラッグ&ドロップでインポートします。

2. 動画タイトルの下側に各種パラメータの設定項目があるが、拡大サイズを設定するには、「寸法」タブをクリックして⇒「解像度と拡大縮小」から出力動画の解像度を指定します。「Allow Upscaling(拡大を許容する)」にチェックを入れることを忘れないように。

3. 上部メニューから「エンコード開始」ボタンを押します。これで変換が始まります。

3. Handbrakeを使う際に知るべきこと
HandBrakeには、Topaz Video AIのようなAIによる高度なアップスケーリング機能(ディテールの復元やノイズ除去など)は搭載されていません。
あくまで解像度を引き伸ばすだけの処理となるため、SD画質の映像をアップスケーリングした場合、不自然な画質になったり、映像がぼやけたりすることがあるため、あまり推奨されません。
細かなディテールの再現や高画質化を重視する場合は、Topaz Video AIのようなAIアップスケーリングソフトの利用がおすすめです。
もしTopazが高額で手が出せない場合は、オープンソースで無料利用できる「Video2X」を試してみるとよいでしょう。
やや使い方に癖がありますが、学習機能や詳細な調整オプションが豊富で、複数のAIモデルやアルゴリズムにも対応しています。特に、アニメ調の動画のアップスケーリングに適しています。
まとめ
以上が、動画のアップスケーリング方法を初心者でもわかるように説明してきたが、いかがでしたでしょうか。
AIを使用する方法は、高品質な結果を得ることができるが、その反面で計算量やリソースの面では相対的に高コストとなります。
一方で、単純な処理で済ませたいか、または使用可能なリソースが限られている場合は、AIを使用しない方法も有用な選択肢となるでしょう。
ぜひこの記事を参考に、好みに合った方法で動画のアップスケーリングを試してみてください。