近年、AI技術の進化により「低解像度の動画を高精細に変換する=アップスケーリング」が、誰でも手軽に行えるようになってきました。
これまでは、高画質で動画を楽しむには、事前に変換作業が必要でした。しかし、NVIDIAの技術を使えば、視聴しながらリアルタイムで高画質化が可能に。
この記事では、NVIDIAで動画をアップスケーリングしたい方に向けて、具体的な方法を詳しく解説します。
目次
NVIDIAで動画をアップスケーリングとは?
NVIDIAで動画をアップスケーリングするとは、具体的には「NVIDIA RTX Video Super Resolution(RTX VSR)」(超解像度)というNVIDIA独自の技術を使って、低解像度の動画を高画質に変換して再生することを指します。
✔ RTX VSRとは
NVIDIAのAI画像処理技術とTensorコア(専用のAI演算ユニット)を活用し、YouTubeやTwitchなどのWeb動画をリアルタイムで高画質化できる機能です。
✔ RTX VSRの特徴
RTX VSRは、たとえば720pの映像でも、RTX VSRが自動で超解像処理を行い、1080pや4K相当の鮮明な画質で視聴できるようになります。
一般的な超解像技術に比べてボケ感が改善され、また超解像処理にともなう映像のジャギーやゴミ(アーティファクト)を減らしているということです。
✔ NVIDIAのRTX VSRで動画をアップスケーリングするメリット
- リアルタイム処理:対応ブラウザや動画プレイヤーで再生するだけで、その場で映像を高画質化。
- 幅広い対応コンテンツ:YouTubeやTwitchなどのオンライン動画はもちろん、ローカルに保存された動画ファイルにも対応。
NVIDIAで動画のアップスケーリンを行うために必要な条件
まず、RTX Video Super Resolutionを使うためには、以下の3つの前提条件が必要になります。
- 【OS】:Windows 10(64bit)またはWindows 11(64bit)
- 【GPU】:GeForce RTX GPU1000以降(ノートPC・デスクトップ両対応)
- 【対応ブラウザ/プレイヤー】:Google Chrome、Microsoft Edge、Firefox(最新版)、VLCメディアプレイヤー
その他のポイント
- 最新のNVIDIAドライバーを使用してください。古いドライバーではVSRが使えない場合があります。
- Chromiumベースのブラウザでも多くは動作可(ただしNVIDIA公式ではChromeとEdgeのみ検証済)
- Microsoft Edgeでは、NVIDIAのVSRを使う前に、Microsoft独自のVSR機能を無効化する必要があります。
NVIDIAでアップスケーリング(高画質化)するための設定方法
それでは、RTX Video Super Resolutionの設定方法を解説していきます。
概要
RTX VSRは、「NVIDIAコントロールパネル」または「NVIDIAアプリ」(推奨)から有効化できます。
この機能をオンにすると、対応ブラウザやVLCで再生する動画に、AIによるアップスケーリングが自動的に適用されます。
具体的な手順
RTX Video Super Resolutionを「NVIDIAコントロールパネル」から有効にする場合は、起動画面で「ビデオ」→「ビデオ イメージ設定の調整」→「RTXビデオ強調」と順に進んで設定を行います。

一方、NVIDIAアプリを使用する場合は、アプリを起動して「システム」→「ビデオ」から設定が可能です。

ここでは、NVIDIAアプリを使った設定手順を例に、詳しく解説していきます。
この画面の下半分に「Super Resolution」という項目があり、その下にある「オフ」をクリックすると、次のような設定画面が表示されます。

デフォルトではオフになっているため、まずは「オン」に切り替えましょう。
次に、超解像処理の品質を決める「クオリティ」設定には、「自動」と「手動」の2つのモードがあります。
以下、それぞれの特徴を簡単に解説します。
✔ 自動モード
GPUの使用状況に応じて画質が自動で調整されます。
ゲームや他のアプリとの併用時にもバランスよく動作するため、基本的にはこの設定がおすすめです。
また、「GPU優先」は「低」〜「高」の3段階から選べるので、使用状況に応じて調整してください。
✔ 手動モード

常に一定の画質レベルで再生したい場合に選びます。
クオリティレベルは「非常に低い(標準)」〜「高」の4段階で、レベルが上がるほどGPU負荷も高くなります。
まずはデフォルト設定で試し、必要に応じて調整するのがおすすめです。
最後に、画面右下の「OK」ボタンをクリックすれば、設定が保存され、RTX Video Super Resolutionが有効になります。
RTX VSRを有効にしたのに、ステータスが「非アクティブ」と表示されて戸惑う方もいるようです。
実は、Google Chrome や Microsoft Edge、VLCメディアプレイヤーなどで動画をフルスクリーン再生していれば、自動的に「アクティブ」に切り替わる仕組みになっています。
NVIDIAでアップスケーリングの効果を感じられないか?
結論として、360p~1440pの動画を1080pや4Kなどの高解像度ディスプレイで再生する場合に、RTX VSRの効果をもっとも実感しやすくなります。
低解像度のストリーミング映像をより鮮明な画質で楽しみたい方には、特におすすめの機能です。
ただし、以下のような場合には効果を感じにくいこともあります。
✅動画がすでにネイティブ解像度または高解像度の場合
例:1080pの動画を1080pの画面サイズで再生している場合
→ 元の解像度と再生サイズが同じため、アップスケーリングが行われず効果が出ません。
✅複数の動画を同時に再生している場合
例:YouTubeをChromeとEdgeで同時に開いて再生している
→ 最後に操作した動画(アクティブなウィンドウ)にのみ効果が適用されます。
✅ウィンドウ再生で解像度が小さい場合
例:720pの動画を小さなウィンドウで再生している
→ 映像が引き伸ばされないため、アップスケーリングが発生せず、効果は見えません。
✅ディスプレイ自体の解像度が低い場合
例:フルHD(1920×1080)のディスプレイで、4K相当の高画質効果を期待している場合
→ 画面に表示できる解像度に制限があるため、アップスケーリングの効果が発揮されにくくなります。
✅VSR非対応の動画コンテンツを再生している場合
例:DRM(著作権保護)付きの動画やYouTubeショートなど
→ 一部の動画コンテンツはVSRの処理対象外となっており、アップスケーリングが適用されません。
実際に使ってみた感想(検証画像付き)
私の環境(RTX 4090、Chromeブラウザ、4Kモニター)でこの機能をしばらく試してみました。


その使用感を、以下に簡単にまとめます。
メリット
ゲーム動画やライブ配信、特にアニメでは画質の向上がはっきりと感じられました。
42インチモニターで1080pのアニメを全画面再生すると、以前はややぼやけた印象がありましたが、RTX VSRを有効にすることで映像がより鮮明になり、快適に視聴できるようになりました。
デメリット
映画やドラマなどの実写映像では、逆に“塗り”のような処理が目立ち、やや不自然さを感じることもあります。
また、高画質設定にするとGPU負荷が大きくなり、ファンが勢いよく回り出すのも気になりました。