動画や映像制作の現場で、「撮影した映像がピンボケだった……」というトラブルは意外とよくあるもの。
大切なカットを撮り直すのが難しい場面では、編集ソフトでピンボケを補正する手段が求められます。
本記事では、Adobe After Effects(アフターエフェクト)を使ってピンボケを補正する基本的な方法や、おすすめのエフェクト・設定について、初心者にもわかりやすく解説します。
目次
【最も手軽】After Effectsの基本エフェクトでピンボケ補正
After Effectsでピンボケを補正する最も手軽な方法は、「シャープ」エフェクトを使うことです。
この方法は、細かい設定なしで手軽に映像の輪郭を強調できるため、緊急時や簡易的な補正に役立ちます。
1. この方法の特徴(メリット・デメリット)
メリット
- 複雑な手順や専門知識が不要で、数クリックで完了する手軽さが魅力です。
- 軽度のピンボケや輪郭のぼやけに対しては、効果的にシャープさを復元できます。
デメリット
- 大きくぼやけた映像や焦点が完全に外れた映像には、十分な補正が難しい場合があります。
- 過度な補正は輪郭がギザギザになったり、もともと少ないノイズが強調されることがあります。
2. 操作手順
① After Effectsでピンボケを補正したい映像をタイムラインに配置。
② 画面右側の「エフェクト&プリセット」パネルを開く。
③「ブラー&シャープ」カテゴリ内にある「シャープ」を検索。

④「シャープ」エフェクトを該当レイヤーにドラッグ&ドロップで適用。

⑤ エフェクトコントロールパネルで「シャープ量」を調整し、見た目が自然な範囲で補正する(目安としては10〜30程度から試すとよい)。
【中・上級者向け】After Effectsで高度な設定を使った補正方法
上記の方法で満足のいく結果が得られない場合は、次の方法も試してみてください。
1. この方法の特徴(メリット・デメリット)
メリット
- 前の方法より補正を細かく調整できるため、より自然で高品質な仕上がりが期待できます。
- After Effectsの標準機能だけで完結するため、追加の費用がかからないのも大きな利点です。
デメリット
- ある程度の経験が必要で、初心者には設定がやや複雑に感じられる可能性があります。
- 細かい補正や複数エフェクトの使用により、編集やレンダリングに時間がかかる傾向があります。
2. 手順とポイント
① After Effectsでピンボケを補正したい映像をタイムラインに配置。
② 映像素材を2回複製して、合計3つのレイヤーを用意。

③ 一番上のレイヤーを選択した状態で、「エフェクト&プリセット」パネルを開く。
④ 「エフェクト&プリセット」から「反転」エフェクトを検索して適用。

⑤ 続けて、「ブラー(ガウス)」エフェクトも追加。

⑥ 画面左上の「エフェクトコントロール」パネルで、「ブラー(ガウス)」のブラー量を「2」に設定。

⑦ 最上位レイヤーを右クリックし、「描画モード」→「ビビッドライト」を選択。

続いて、4つのレイヤーペアを作成し、それぞれのペアごとに色レベルを調整します。

① 最上位のレイヤー(以下、A)と2番目のレイヤー(B)を選択し、色レベルを調整します。
② AとBを複製し、生成されたレイヤー(CとD)の色レベルも同様に調整します。
③ CとDを複製して作成したレイヤー(EとF)の色レベルも調整します。
④ EとFを複製し、できたレイヤー(GとH)も同様に色レベルを調整します。
複製の仕組みは以下の通りです。
A → C → E → G
B → D → F → H
各ペアの上にあるレイヤーには、「ブラー(ガウス)」エフェクトを以下の値で設定してください。

- レイヤーA(1つ目のペア):ブラー量 2
- レイヤーC(2つ目のペア):ブラー量 4
- レイヤーE(3つ目のペア):ブラー量 6
- レイヤーG(4つ目のペア):ブラー量 8
そして、素材とその加工レイヤーをペアでまとめ、プリコンポジション化します。
① レイヤーAとBを選択し、右クリックメニューから「プリコンポーズ」を選択して「OK」をクリック。

② 同様に、CとD、EとF、GとHの各ペアも順にプリコンポーズ。
最後に、各プリコンポジションの「描画モード」を「オーバーレイ」に設定すれば、作業は完了です。

【おすすめのポイント】
このテクニックの優れた点は、仕上がりを細かく調整できることです。
✅ 不透明度での調整
すべてのレイヤーを選択し、不透明度を調整することで、元の映像にどの程度効果を反映させるかをコントロールできます。
✅ プリコンポジションの順番変更
各プリコンポジションの並び順を変えてみると、また違った効果が生まれます。さまざまなパターンを試して、最適なものを見つけてみてください。
✅ ブラー量の検証
「ブラー(ガウス)」の最適な数値は、素材によって異なります。ご紹介した数値はあくまで目安として、ご自身の映像に合った最適な値を探してみてください。
【高精度&超簡単】After Effects用プラグインでAIで一発補正
もし、ここまでの方法でご希望の仕上がりが得られない場合は、最終手段としてAIを活用した専用プラグインの導入を検討してみてください。
特におすすめなのが、AIによる動画高画質化に特化した業界最強の「Topaz Video AI」です。このソフトは単体でも使えるほか、After Effectsのプラグインとしても利用可能です。

1. この方法の特徴(メリット・デメリット)
メリット
- 高度なAI技術により、ピンボケやノイズ、解像度の低い映像でも短時間で高品質に補正できます。
- 複雑な調整や専門知識がほとんど必要なく、AIに任せられるため手軽に使えます。
- 手動補正と比べて大幅に時間を節約でき、効率的に高画質化が可能です。
デメリット
- Topaz Video AIは有料ソフトであり、購入・ライセンス料が必要です。
- AI処理のため、高性能なGPUやCPUを搭載していないと処理時間が長くなる可能性があります。
2. 導入から使用までの流れ
Topaz Video AIの導入方法はOSによって異なります。
【Windowsの場合】

① Topaz Video AI アプリを起動して、ログインする。
② メニューバーから「Plugins」>「Install After Effects Plugins…」を選択して、画面の指示に従ってインストールを進める。
【macOSの場合】

① まず、Topaz Video AI をインストールししてください。
② 次に、pkgインストーラーを再実行し、「Installation Type」の画面で「After Effects Plugin」にチェックを入れて進めます。
インストールが完了したら、After Effectsを再起動してください。エフェクトの一覧に「Topaz Video AI」が追加されているはずです。
Topaz Video AIの使い方は簡単で、詳しい操作方法は以下の記事をご覧ください。

まとめ
以上、After Effects を使ったピンボケ補正の3つの方法をご紹介しました。
基本エフェクトを使った手軽な方法から、複数のレイヤーや描画モードを駆使する中・上級者向けの調整、そしてAIプラグインによる高精度かつ簡単な自動補正まで、それぞれにメリットと注意点があります。
目的や作業時間、仕上がりの精度に応じて、最適な方法を選んでみてください。
必要に応じて組み合わせて使うことで、より自然で高品質な映像表現が可能になります。