Topaz Video AIは、動画の高画質化やノイズ除去、フレーム補間などを高精度にこなせる優れたAIツールですが、その分処理時間が長くなりがちです。
特に高解像度や長尺動画では、完了までにかなりの時間を要することもあります。
この記事では、Topaz Video AIの処理を高速化するための実用的な方法を紹介します。
目次
Topaz Video AIの動作は遅いか?
「Topaz Video AI、処理が遅すぎる!」と感じる方は多いかもしれません。
10分の動画に数時間、20分の動画なら数十時間以上かかることもあります。でも、これは高品質なAI処理ゆえの当然の結果なのです。
Topaz Video AIは、単に画質を引き伸ばすのではなく、AIが映像を一から再構築しています。ぼやけた輪郭を補い、圧縮で失われたディテールを復元し、フレームの間を自然に補間するなど、非常に重い処理を1フレームずつ行っています。
例えば、720×480の20分動画は約3万フレーム。1フレームあたり5秒かかるとすると、約42時間が必要になります。
高性能なGPU(RTX 4070 Tiや4090など)を使っても0.2〜1.0fps程度という声も多く、「1分の動画処理に1時間」というのは珍しくありません。
Topaz Video AIを高速化する方法4選
すぐ試せるTopaz Video AIを高速化する方法について、4選紹介していきます。
- 最新版へアップグレードする
- 高速なGPUを用意する
- 高速化におすすめの設定
- 「Cloud rendering(クラウド処理)」を利用する
1. 最新版へアップグレードする
古いバージョンのTopaz Video AIを使っている場合は、最新版へアップグレードすると高速化する可能性があります。

古いTopaz Video AIではGPUの使用率が不安定で、処理が遅くなることがあります。例えば、処理中のGPU使用率が0.1〜50%程度とムラがあり、CPUもほとんど使われていないという報告もあります。
継続的なバージョンアップにより、GPUの活用効率も大きく改善されてきています。
たとえば、同じ設定・同じ動画でも、古いバージョン(例:2.6.4)では処理に2分かかっていたものが、後のバージョン(例:3.2.6)ではわずか30秒に短縮されたというユーザーの声もあります。
古いままでは高性能なGPUも十分に活かせず、特にRTX 30〜40番台などの最新GPUでは、その差がより顕著です。
最新版(例:7.0.0)にアップグレードすることで、処理時間が半分以下になる可能性も十分にあるでしょう。
2. 高速なGPUを用意する
Topaz Video AIの処理速度を左右する最大の要因は、GPU(グラフィックボード)の性能です。
このソフトは処理の多くをGPUに依存しており、CPUやメモリを増設しても大きな効果は見込めません。実際、メモリを16GBから32GBに増やしても、処理速度の改善はわずかで、多くのユーザーが「GPUを強化するのが最も効果的」と実感しています。
たとえば、20分の360p動画を1080pに変換するのに1日以上かかる場合、GPUの性能不足が原因である可能性が高いです。
このような場合、RTX 3060クラス以上のGPUを導入するだけで、これまで1日かかっていた変換作業が数時間〜半日程度に短縮される可能性があります。さらに、RTX 4070や4090といったRTX 40シリーズのハイエンドGPUを使えば、より一層の高速化が期待できるでしょう。
4K・60fpsや長時間の動画といった負荷の高い処理を快適に行うには、高性能なGPUの導入が最も効果的です。
PCに増設の余裕がある場合は、最新世代のGPUを検討してみるとよいでしょう。
3. 高速化におすすめの設定
Topaz Video AIの設定をいくつか見直すだけで処理速度が大幅に向上することがあります。
実際、M1 Max搭載のMacBookで0.3fpsしか出なかった処理が、設定変更後に18fps以上まで改善されたという報告もあります。
【具体的な高速化の設定例】
✔ 匿名データ収集をオフにする

メニューの『File』>『Preferences』を開き、『Application』内の『General』にある『Allow anonymous data collection(匿名データ収集を許可)』をオフにすると、処理に使えるリソースが増え、速度が向上することがあります。
✔ 出力コンテナを変更する
入力がMOVの場合は、出力もMOVに統一すると、再エンコードの手間が省けて処理が高速になることがあります。

✔ 出力品質を「中」から「高」に変更
一見すると逆効果に思えますが、「Medium(中)」より「High(高)」の方が圧縮が少なく、処理が速くなることがあります。
【その他の工夫】
✔ 不要なアプリやバックグラウンド処理を終了する
リソースを最大限Topazに割り当てるため、重いアプリは閉じておきましょう。
✔ 段階的な高画質化処理
例えば、4倍に高画質化したい場合は、一度に処理せず「2倍 → 出力動画を再取り込み → さらに2倍」と段階的に行った方が速くなることがあります。
✔ 一度に多くの編集を実施しない
1080p/30fpsの動画を4K/60fpsに変換する場合は、まず「1080p→4K」に変換し、その後に「30fps→60fps」に分けて処理すると効率的です。
✔ 長尺動画は短く分割して処理する
20分を超える動画などは、事前にトリミングして数分ごとに分けて処理すると、エラーや速度低下を防げることがあります。
4.「Cloud rendering(クラウド処理)」を利用する
Topaz Video AIを高速化する方法のひとつとして、「Cloud rendering(クラウド処理)」の利用があります。
これは、PCの性能に依存せず、Topaz Labsが提供する高性能なサーバー上で動画を処理する機能です。
重たい処理をサクッと終わらせたい場合、クラウド処理を積極的に活用することで、作業効率を大幅に高めることができます。
【Cloud renderingの特徴とメリット】
✅ 圧倒的な処理スピード
アップスケール処理(例:1080p → 4K)を比較すると、
Cloud Render:22分
RTX 4090搭載PC:2時間34分
M4 Max Mac:3時間21分
と、クラウド処理は最速で約7〜9倍のスピードを誇ります。
※ クラウド側で最新かつ最も高性能なハードウェア(おそらく複数のGPUや専用のAIアクセラレータなど)が惜しみなく投入されているためと考えられます。
✅ 高負荷でも安定した動作
高解像度(4K〜16K)や高fps(60fps以上)など、ローカルPCでは重くなりがちな処理も、クラウドなら快適に実行可能です。
✅ PCスペックに関係なく使える
手元のPCが非力でも、処理速度に悩まされることなく高品質な出力が可能になります。
【利用方法と注意点】
クラウド処理を利用するには、有料版のTopaz Video AIに加え、Cloud Credits(クラウドクレジット)の購入が必要です。
クレジットの消費量は、出力する解像度やフレームレート、動画の長さ、使用するAIモデルによって変動します。
出力サイズ( 24fps/1分間) | クレジットの消費量 |
---|---|
1080p | 6 |
4K | 24 |
※ 出力は最大16Kまで対応しており、クレジットの価格はアプリ内で確認でき、定期的に更新されます。
感想
Topaz Video AIは、その高精度な処理ゆえにどうしても動作が重くなりがちです。
今回ご紹介した方法を実践することで、驚くほど快適に使えるようになります。
特に、設定の見直しやクラウド処理の活用は手軽に効果を実感しやすく、ハイスペックなGPUがなくても処理時間を大きく短縮できるのが魅力です。
動画編集の作業効率を上げたい方は、ぜひ一つでも取り入れてみてください。